0-15-1-Yosh Marathon M Age50

分析:ランナー編

普段ランニング練はしない(マラソンもしない)が、毎年3kmのタイムトライアルがあり、今年も4分/kmを維持するのが目標という、50歳男性ランナーのYoshさんのフォーム分析をしました。
普段あまり走らないとは思えないほど、3分/kmと速い走行でもフォームの崩れはなく、多くの指標において大学の陸上部に近い指標パフォーマンスを示していました。
左右差などのフォームの癖は少ない方ですが次ような特徴が観測されました。
着地衝撃による骨盤ドロップが大きく、そのための上半身の左右の横振れが少し見られる。
左側の着地時の骨盤ドロップがより大きいので、重心バランスを取るため左腕を横に広げて振り、全体的に上体が右側へ傾く特徴がある。
左膝が(右より)伸びた状態で着地するため、左足が弱いがカカト着地になっている(右はフラット着地)。
かつ、左膝の屈曲変化が右より強いため、強い蹴りとなり身体の上下動の変動が右側の着地より大きい。

1.走力パフォーマンスの概要

計測時のランニングスピードが3分/kmと速いが、フォームの崩れは無くバランスが取れている。
50歳の年齢としては優れていると思われます。

計測時の速度が3分/kmとかなり速いので、速度を考慮した統計分析をして他ランナーさんとのフォームを比較して分析しました。(今回初めてこの評価法を導入しました)

チャートによるパフォーマンスパランス評価

  • ストライド:若干長く(優)
  • 接地時間 :若干短く(優)
  • 空走期間 :若干長い(優)
  • 身体上下動:標準的
  • ピッチ  :標準よりやや少ないが、大学陸上の中長距離選手レベルで悪くない
  • 膝の高さ :左大腿の上がる高さが少し標準より低いが、右は標準
  • 着地   :左足が少しかかと着地、右足はフラット着地
主要フォーム指標のバランス(今後項目が増えます)

フォーム指標をより詳しく他ランナーと比較

  • 速度はストライドとピッチの掛け算ですが、ストライドがやや優位となっています。
  • それは、膝が前方へ高く上がり(大腿前方振り角度やや大きい)、空走期間が長い・短い着地期間であることから、着地での地面の反発力がうまく使えているためと推定されます。
  • 身体上下動が若干大きいですが、問題はありません。

フォームの左右差評価

脚回りの左右差は少ない

概ね左右差は少ないが、指標分布表の赤で印した4項目は少し左右差が見られる。

脚の動きに関する指標の左右差の偏り(deviation)を評価 

大腿の前方へ振り(膝の高さ)が、右の方が大きい

アニメを使って説明すると、右脚側の膝が左より高く上がっている。
なお、この差が後半で説明するかかと着地とフラット着地の差にも影響していました。

腕振りと脚振り体の傾斜の左右差が少しある

詳細は後半で解説(身体上下動の左右差腕振りの左右差

フォームの特徴を個別に詳細に分析

スピード

速度の変動は、ばらつきが多く、何らかの傾向や特徴は見られなかった。

補足:
人によっては、着地と加速の様子が観測される

着地タイプ

左脚は弱いヒール着地、右足はフラット着地

左足が弱いヒール着地、右足がフラット着地です。
マラソンから高速の走り(スプリント)になるにつれて、一般にヒール着地からフォアフット着地のランナーが多くなります。これは、フラット、そしてフォアがより地面の反発力を活かせるからです。
加齢にともない、長距離を走る場合は、フラット着地が故障リスクの点からは推奨されています。

左足はヒール着地、右脚はほぼフラット着地

着地時の膝や足首の動きの特徴

着地した瞬間に膝が外側を向き、(股関節の外旋)、同時に膝が屈曲し、つられて足首が捻ったように動いています。

この動きは、一般に短距離走や、脚力のある若い陸上選手に見られる走り方で、脚の筋力を使って体を前方に押し出す(加速する)動作です。
(なお、オーバープロネーションは起きていません)

この走り方は、筋持久力が必要となることや、膝関節にも捻る力がかかるので、足首や膝の故障のリスクがあると思われます。そのため、長距離のマラソンを走る場合は、着地で膝が横にぶれないまっすぐなフォームが望ましいです。さらにマラソンでは省エネルギーの点から、筋力よりも、地面の反発力を活かす走り方が良いと思われます。
(ただし、速度を落として走ると、膝の横への動きは出てない可能性もあります)

身体の上下動と膝の屈曲

身体の上下動に少し着地足差がある。上下振れ幅は標準的

左足着地で体の沈み込みが、右より約2cmと少し大きいようです。
高い位置は右とほとんど変わらないため、左脚の蹴りが右より強い特徴があります。
(この左右差は腕振りと強く関係していました。後半で説明します
ですが、その上下振幅の大きさは他ランナーと比べると標準的です。

左図: 身体の上下動   右図:速度と身体上下動の分布 

補足解説:
・ゆっくりしたペースから速い走りになるにつれて、一般的に体の上下動は減って行きます。
・但しその個人差は大きい。(走力の有る無しに関わらず、高く飛ぶ癖があったり、蹴る脚の力に左右差があれば、痛む側の膝を庇うなどにより、個人差が大きいとも言える)
・マラソンでは、フォームが腰高とか腰が落ちているなどの見た目の印象が、この身体の上下動のパターンに現れます。
・同じ速度で比較した時、上下動の少ない方が省エネな走りだと言えます。

膝の屈曲と上下動

着地時に膝は着地衝撃を吸収するため屈曲し、その後地面を蹴るため膝は伸びるので、身体の上下動への影響が大きいと言えます。
着地直前の膝の屈伸変化を見ると、左膝(赤線)の方が右より伸びてから

着地期間付近の右膝と左膝の角度変化を重ね書きしたものをみると、左膝は右よりも伸びて着地(前述の踵着地)し、屈曲し、ピーク角のときに、身体は最も沈み、その後膝が伸びて、地面を蹴る動作をしています。
この時右膝の変化が大きいので身体の上下動も、左着地の方が大きくなっています。
また、膝角度のピーク値は、他ランナーと比較するとほぼ標準値でした。

左図:膝の屈曲変化  右図:膝の着地時ピーク角と速度分布

骨盤ドロップが大きく、上体の横振れの一因

上体がやや右に傾いている

上体が右に傾斜したままで、左右への横振れが見られます。
左右のブレの一因は下記によるものです。

骨盤ドロップが大きい

着地衝撃により、骨盤が着地足と反対側に傾く骨盤ドロップ現象(Pervis Drop)が見られます。

腰の左につけたマーカの縦方向の位置変動(頭の位置基準)グラフから、右脚着地で急峻に腰(骨盤)が4cmも変位している(骨盤ドロップ)角度で7度以上と推定されます。
また、体の右側からの映像はないので比較ができませんが、後方から撮影した腰のマークからは、左着地で右側に骨盤がより大きく傾いているのが見えます。

また、骨盤が傾むくことによる体の重心の偏りを補うため、上半身が反対側に倒れます(横に動く)。
これが、着地ごとに起きる上体の横方向のブレの主な原因の一つになっています。

骨盤の傾き換算では、右着地で7度、左着地では10度はあると思われます。
男子で5度以上はフォームの乱れ(無駄な動き)になるという説もあるので、修正した方が良い項目です。
主な対策は、中臀筋(腰と大腿を繋ぐお尻の横側の筋肉)の強化。

肩腰の回転と腕脚の振り

肩と腰の回転

(肩と腰に付けたマーカーから弊社の独自アルゴリズムで回転を求めました)
肩の回転に対して、腰は約1/4周期遅れて回転しています(一般的です)。
肩も腰も他ランナーと比較するとそれらの回転は大きい方です。

腰の回転が大きいのは、先に述べたような、着地時に股関節(大腿)の外旋、つまり膝が外を向く走りのためと思われます。ちょうど、腰の回転の最大、最小の位置が着地期間の中央になっていることからもわかります。

腕や脚振りとの連動

動きは標準的です

肩の回転と腕振り

腰(骨盤の回転)と脚振り

腕振り

左上腕
前後の振り幅が右腕より大きい(グラフより)
肘の横への張り出しも左腕の方が大きい(写真右上、右下)

右上腕
右腕を後方に引くときに、上体が右に傾き(写真右下)、かつ左腕が体側よりも前方に出ている。

脚と腕振りとの連動性
左腕が右腕より振りが大きく、上体も右に傾く傾向があるのは、体の上下動の左右差で見たように左脚着地で蹴るのが右着地よりも高く跳ぶための反動をつける無意識の動作です。
おそらく、利き脚との関係だと思われます。

肩の上下動

(左肩のマーカーのみのデータですので、注意ください)
グラフは、頭と肩の位置差を示しており、上下動が10cmあります。着地の時に肩が下がっていますが、力が抜けていることを示すので良い動きです。
(他のランナー比較は今後追加します)

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