0-10 マラソン 男38歳 PBハーフ1:35

分析:ランナー編

フォーム解析結果まとめ

項目結果・内容評価
A優 B標準 C課題 D他
撮影時の速度速い(3’10″/km)D フォームに影響可能性
上半身の上下動標準的A
上半身の横揺れ大(右に偏って揺れ大きい)C
上半身の伸縮無しA
上半身の前傾小さめ(平均5度)B
着地の足部位かかと(背屈強い)C 要修正
着地の足位置重心よりかなり前方C 要修正
地面反発力の利用小さい可能性
ブレーキ加速遷移時にやや腰が残る
C 要修正
着地時骨盤ドロップ無し(体幹強い)A(体幹強い)
着地時の膝ぶれなしA(脚力バランス良い)
着地足プロネーションなし
足先がやや外向き
B
怪我防止に足先を前方にすべき
脚振りの左右差や癖左右差なし
他問題ある癖なし
B
ストライド / ピッチ
走法
ストライド広い(能力的に優)
ピッチ速い(能力的に優)  
走法はストライドとピッチの中間
しかし、共に限界地付近でフォームに余裕がない
修正を推奨
(どっちかを落とす)
腕振り上腕を前方に振り過ぎ
(短距離走の振り方になっている)
後方への振りは良い
C
マラソンでは肘は前に出さない
肩回転標準範囲B
骨盤の回転標準範囲B

フォーム課題

重要と思われる課題のみ挙げています。

  • 上半身の課題
    上半身を大く動かして推進力にすべく(それ自体は良いが)過度な動きとなり、腕振りと身体の横ブレが発生している(スピードが速いための影響か)
    • 頭と上半身の右側へ偏った傾きとその揺れが大きい →要修正
    • 上腕の前方への振りが大き過ぎる(肘が側体より前に出ており、短距離走の腕の振り方となっていて、エネルギー消費大) →要修正 
  • 着地とストライドの課題
    両足が強い踵着地のまま、限界に近い広いストライドを得るためフォームに無理がある
    • 太腿が前方に過度に高く上がり(市民ランナーの中では最も大きい値)、下腿(膝下すね)も前方に出したまま(膝を伸ばし)接地することで、ストライドを稼ぐフォームとなってしまっている。
    • その結果、踵で着地せざるを得なくなっている
    • かつ、着地位置が前方になるしか無く、身体の重心の真下近くに着地位置を持って来れないから、推進方向へのブレーキとなる。→修正奨励
  • 故障リスク(シンスプリントと足底の痛みの原因推定)
    • 一般にシンスプリントはオーバーユース(衝撃の大きさ・繰り返し回数・長時間)が原因と言われます。踵着地やランニングの初心者にも多いと言われます。練習量を急に増やした場合にもオーバーユースになりがちです。加えて足底筋膜炎とシンスプリントが併発する場合も多いようです。
      他にも、ストライドを伸ばそうとすると膝が伸びますが、着地する少し前に足を強く背屈する(つま先を上に上げる)ため、脛に力が入ります。これが毎回繰り返されると、脛の筋力の疲労が溜まり柔軟性低下し、脛の痛みが起きる(筋力の柔軟性位低下で骨との間の筋膜に炎症)発生にもつながると思われます。
      →修正は、着地衝撃を減らせるフラット着地に変更か、ストライドを狭める、筋肉の柔軟性。膝より下は常に脱力がキーです。
    • 踵着地時の足の背屈がかなり強いので、着地の次の瞬間、踵を支点に足裏が地面に強く叩きつけられます(ペタペタと足音が大きければ衝撃が大きいです)。
      この状態で走り続け蓄積疲労やダメージが限界を超えると(オーバーユース)、足裏の足底腱膜に炎症が起き痛み始めます。さらに我慢したまま続けると、慢性化し足底腱膜炎になる可能性があります。
      →修正は、着地時の足を静かに置くフラット着地に変更か、ストライドを狭め足の背屈を抑える。
    • 参考となるサイト例(Running Clinic様のブログ

パフォーマンスを他ランナーと比較

ピッチとストライドは市民ランナーとして限界を出せてる

スピードはピッチとストライドの掛け算なので、総合的な走力の観点から他のランナーと比較しました。なお、評価対象ランナーをAさんと呼びます。

以下の3つのグラフは、市民マラソンランナー(一部トッププロ)と大学の長距離(5km, 10km)選手のスピード、ピッチ、ストライドそれぞれプロットしました。○で囲んだ点がAさんとなります。
なお、ストライドは、個人の身長差を補正するため、ストライドを身長で割った比で比較しています。
(参考:マラソンにおけるピッチとストライドの傾向

ピッチが200歩超えと多い

速度を上げるとピッチが上がるが、大学選手でも200を超えると限界に近い。(200を超えるランナーもいるが、ハーフやフルマラソンとしては適正値ではない)
Aさんのピッチは一般ランナーとしては限界に近い

ストライドが非常に広い

スピードを上げるとストライドが伸びて行き、市民ランナーと大学の若い長距離選手がほぼ同じ直線上にあります。
Aさんは、市民ランナーとしては非常に広いストライド幅である。

ピッチとストライドの適正限界付近

市民ランナーは、低ピッチからあげていくとストライドも広がりますが、ピッチ200辺りで限界となってます。
さらに高ピッチになるとストライドが落ち、省エネ的には無駄な領域となります。

Aさんは、ストライドとピッチの組み合わせは、市民ランナーとしての効率的な範囲の限界値に達してます。

大腿の前方振り上げが過大

大きなストライドを作る原因として、大腿の前方向への振り出し角度の最大値を比較しました。
Aさんは、市民マラソンランナーの中では最も大きい63度(グラフは負)を示していました。一方、後方の振り角は平均的だったので、前方向へ膝が高く上げられる能力は優れているのですが、速度の割には明らかに大腿(膝)が前方に上がり過ぎといえます。

補足;トップ選手のストライドとピッチ

トップ選手・大学選手と一般市民ランナーのピッチとストライドを比較すると、ストライドに特に差があります。(参考 マラソンにおけるピッチとストライドの傾向

ストライドが広いとかっこいいし速くなるのですが、着地衝撃が非常に強いので脚、足首、全身の強靭さがないと実現できません。
市民ランナーはその領域を目指してトレーニングはするべきでは無いと考えます。

地面の反発力を貰えるフォームかどうか

評価法:地面の反力がブレーキから加速に変わる分岐点のフォーム

マラソンでは、上体が骨盤に乗る・スムーズな体重移動・地面の反発力を得るという表現や、スプリントでは「乗り込み」という曖昧な表現が使われます。これを今回測定評価をしてみました。
(弊社オリジナルの評価手法となります)

着地期間は、ブレーキが掛かる前半と、地面の反発力を使い加速できる後半に分かれ、その分岐は、支持脚の大腿と後から前方に振られる遊脚の大腿とが並ぶときとほぼ一致することが、これまでの検討からわかっています(テーマ分析:体の上下動と膝の屈曲、そしてブレーキと加速の関係)。
その分岐のタイミングの時に、上半身が骨盤に体重が乗って地面を押した時に、反発力が股関節、上半身、頭まで一直線上に乗っていれば、力を利用することができるとする考えです。

ブレーキから加速に変わる水平床反力の遷移点

左右の大腿部の角度がどのタイミングで一致するかを図示しています。
結果は、大腿角−30度で左右差がほぼありませんでした。
フォームが良い選手でも、左右差があるランナーがある項目です。

着目すべき点は、この遷移点での重心と支持脚との位置関係になります。肩と接地位置を結んだ直線に対しての、重心の位置が、前か後ろかという判断になります。

大腿角度の変化。円は両大腿角が一致する点で床反力の遷移点
床反力の遷移点の左右の着地時アニメ

着地で上体が骨盤に乗り遅れている

4人のランナーA,B,C,Dの着地の姿勢を観察します。各人の左側のアニメ着地した瞬間、右側は左右の大腿の角度が一致した瞬間(遷移点)の姿勢を抜粋しています。直線は、肩(首根元)と足首を結んだ線です。

B(1-1)とC(0-7)とD(0-9)では、遷移時の姿勢(右側)は、股関節が直線上に乗っかり、且つ直線が前傾しているため、物理的に地面の反発力を感じて支持脚で地面を後方に蹴る(前方に加速する)ことができます。
A(0-10)は、直線より股関節がまだ後方にあるため、効果的に支持脚で後に蹴る動作を開始できません。上体が骨盤に乗るのが遅いことから、地面からの反発力を貰える時間が短くなり、地面からの反発力の累積値は小さくなります。また、直線の傾きも浅いので、前方向への推進力が小さくなります。
以上のことから、Aさんは、ここに示した他のランナーに比べ地面の反発力を使えてない可能性があります。

着地初期の瞬間と、左右の大腿が角度的に揃うタイミングでのフォーム比較。肩とくるぶしを結ぶ直線に対しての股関節の位置評価

上体が右へ傾く原因の腕振りと右脚の蹴りとの関係

上体が右側に振れる現象を、腕振りと膝の屈曲と上体の上下動のデータから解析しました。
特に、これまで不明だった現象も説明することができました。

上体の右への傾きと腕振り

右脚が着地する時に、上半身が右に傾く癖があります。同時に右腕も横に広げて、右脚で地面を蹴るタイミングで、腕を後方から前方に強く振って左右バランスを補償する動きが見られます。

頭上下動

上体(頭)の上下動をみると、左脚着地よりも右脚着地の方が上体の下降量が大きく、上昇量も大きくなってます。

着地時の膝の屈曲の変化の様子

多くのランナーでは、下降量が大きい方の膝は屈曲が大きくなります。
しかし、Aさんの膝の角度変化は図の様に、左右の膝で傾向が大きく異なっています。
特に、右膝の屈曲の極大値(フレーム#26付近)は、左膝よりも小さい。つまり右膝は衝撃吸収のためには左より曲がってない。しかも、膝が曲がった後の膝の伸展が左膝よりもずっと大きくなっています。

膝の屈曲の変化
膝の屈伸角度の変化を示す。着地時の右膝と左膝の変化の様子が異なっている

これらの現象は次の様に説明できます。

  1. 右脚が着地する時に(着地前半)上半身が右に傾く。
  2. 同時に右腕も横に広がっていて、右脚で地面を蹴るタイミングで、腕を後方から前方左方向に強く振ることで、右に傾いた上体を左に戻そうとする。
  3. この腕の振り子の力を得るためには、支持している右脚を踏ん張る(膝はできるだけ曲げない)こと、さらには着地後半では腕振りと膝を伸ばす動作をタイミングを合わせることで、上体を左向きに回転させる力にしている。

おそらく、腕振りの反動を使って速く走るためのために、上半身が傾き、それを補償するための膝の動きだと思います。速度を遅くした時にこの傾向が目立たない程度であれば問題ないと思います。
もし、残ってるようでしたら、癖として染み付いている可能性もあるので、今のうちに右側偏重の動きは修正が望ましいと思われます。

上半身の伸縮

腰の上下動と頭の上下動比較

頭と腰部につけたマーカーの上下動を比較しましたが、変動量がほぼ同じということから、着地などによる衝撃でも、上半身はほとんど伸縮がないと言えます。
トップ選手でも、伸縮するランナーもいるため、一概にどちらが良いとは言えませんが、ここでは背筋や体幹がしっかり保てていると思います。

その他

肩の回転

肩につけたマーカーの動きから、弊社の肩の回転モデルに入れると、綺麗なSinカーブと示し、回転の大きさ(振幅)は23度と一般的です。

骨盤の回転

腰につけたマーカーの動きから、骨盤の回転をsinカーブモデルに入れると、右着地の後半の骨盤の動きがsinカーブから外れている。
この理由は、先に示した右脚着地の特殊性によるものと考えます。

フォーム修正のアドバイス

  • 省エネ走法と故障防止のため踵着地をフラットに変更
    着地で地面の反発力を感じるフォーム(経験的には、下っ腹を適度に前に出すことで、骨盤に上半身が載る感覚を体得しました。別途記事掲載予定)
  • ストライドとピッチの両方を頑張る走法から、どちらかを優先する走法にする
    力みを減らし(多分ストライドを抑えれば)、上腕の前方への大きな腕振りは抑えられる(後への振りは良い)

着地の変更は時間がかかり大変ですが、年齢が若いことと持っている基本的な身体能力が高いので十分に可能です。(弊社スタッフ自身の経験したヒール着地から体重を乗せられるフラット着地にフォーム改善した記事を参考にしていください)

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