上体の横ブレと骨盤の傾斜及び仙骨疲労骨折リスク

分析:テーマ編

ランナーの中には、走る時に身体が人よりも揺れていると感じている方が居ます。ランナーAさんもご自身のビデオを観た時にそういう印象を持ったそうです。今回、他の方と比較しながら別のサイトの先行情報1)2)3)も参考にして、上体の横揺れを3Dアニメーションと3Dデータで再現し考察しました。その調査の中で、今回の現象がトレンデレンブルグ徴候と呼ばれる動きと類似であり、仙骨の疲労骨折の一つの原因となることが指摘されていましたので、付け加えておきます。

体の横揺れの気になるランナーさんや、足の速い方で筋トレはあまりやらない方などには特に有益な情報となると思いますので、是非ご一読願えればと思います。

なお、下記サイト情報などを参考にさせていただきましたのでお礼申し上げます

  1. http://arbor.life.coocan.jp/12senkotuhiroukossetu.htm
  2. https://koto-orthopaedics.com/disease-trunk/waist/sacral-fatigue-fracture/
  3. 股関節外転筋力が大きい側のみにトレンデレ ンブル グ徴候を認めた両変形性股関節症患者2例」坂本年将,  理学療法学 第19巻第2号 103〜108頁 (1992年)   https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/19/2/19_KJ00003127042/_pdf
  4. トレンデレンブルグ徴候 (間接ライフ様ホームページ)
 

 

ビデオから気づく上体の横揺れ比較 3名

まずは、3名のランナーAさん、Bさん、Cさんを後ろから撮影した動画(4倍スロー)を再生して見て下さい。
(再生すると連続再生しますので、止めたい時は画面もしくは停止ボタンを押して下さい)

3名とも走力がサブスリーレベルで足の速い方たちです。

Aさん(PB 2:58) 上体の横揺れが大きい  計測時3’51”/km
Bさん(PB 2:35) 横揺れ小 計測時3’02”/km
Cさん(PB サブスリーの実力)  横揺れが少ない  計測時3’13”/km

Aさんには、上体に大きな横ブレが見られます。BさんとCさんは横揺れが少ない走りとなっています。

 

その傾き具合の絶対値は、フォーム改善にはその人にとって必要なパラメータとなりますが、単純なビデオでは難しく、きちんと3次元のデータに変換して評価することが重要だと思います。

骨盤傾斜と上体の傾き

最も傾いたときの姿勢の時の腰と背中にその傾きを表す線を入れました。
着地脚側(支持脚)に上体が傾き、逆に骨盤は反対に遊脚側(浮いている方の脚側)に傾いているのが分かります。

これは、着地衝撃で遊脚が下に沈み、骨盤いわゆる腰が傾きます。すると重心が遊脚側に傾こうとするのでそれを補償するために(そうさせない)、上体が反対の支持脚側に傾くというものです。

これがAさんの場合、上体が左右に揺れる原因となってると思われます。

サブスリーランナーのAさんは、この揺れが小さくなれば停滞していた自己ベストの更新も十分狙えると思います。

3Dアニメーションで横揺れを再現

3次元データを解析し2人のランナーさんの動きを3Dアニメーションに再現して見ました。

(クリックした先のアニメーションサイトで下方にある[Side]を何回か押せば、背面、側面、正面からのアニメーションに切り替えられます。Speedの可変[-][+]や、コマ送り[step][-][+]も可能ですのでお試しください。markerボタンを押すと、擬似的な骨格モデルが表示されます)

 

そのアニメーションを背面から観たものをキャプチャーした動画3Dアニメーションのキャプチャー動画を下記に載せましたので観て下さい。

Aさん、Cさんの実写ビデオと同じように、上体の左右ブレが3Dアニメーションで再現されているのがわかると思います。

Aさん3Dアニメーション 揺れが大きい 
Cさん3Dアニメーション 揺れが少ない

3Dデータ変換と3Dアニメーションによるフォーム解析の問い合わせ、お申し込みはこちらです。

 

骨盤傾斜とその結果としての上体の傾きの原因

着地で遊脚が下がり骨盤が傾いて、上体が反対に傾く

着地したあと身体は下降して、遊脚の太腿が着地側の支持脚を追い越す瞬間(並んで揃う)に身体が最も沈み込みます。(投稿カテゴリーランニングフォームの「身体の上下動」参照)

この瞬間の正面から見たアニメの骨格がこのイラストです。

遊脚(右脚)が下がり、骨盤が遊脚側に傾き、上体の中央の線が反対の左体側側(イラストでは右)に傾斜しています。この度合いが、Aさんは大きく、上体は最大でそれぞれ左に6度、右に4度傾いています。(レポート例参照)

Aさん 大転子が下がり骨盤が傾斜し、反対側に上体が傾く

同じような見方だと、Cさんでは遊脚が下がらず、骨格も水平で上体もほぼ垂直を保っています。

Cさん 遊脚が下がってないし、上体も傾いてない。

股関節の傾斜は筋力不足

以上のことを図で順に見てみます。

空中を飛んでるところから着地すると、着地脚の脚と骨盤は地面の反力で下降に強いブレーキがかかる。

①遊脚や遊脚側の体はそのまま落ち続けようとするため、

遊脚側の骨盤は下向きに回転トルクがかかる。

③このとき、骨盤の外転に関係する中臀筋と小臀筋(その他の筋力含め)の力が弱いと、②の回転トルクに負けて骨盤は傾く

もし、このときその筋力が強ければ骨盤の傾きは抑えられる。

骨盤の傾くことで重心がづれるのを補償する為に上体が反対側に傾く

速いランナーほど着地衝撃が大きくなるため、上体のブレを抑えるにはそれに相応しい骨盤周りの筋肉が必要になります。

もちろん、中臀筋だけでなく骨盤周り以外にも服筋群も姿勢の維持には効くので、結果として体幹をバランスよく鍛えることが重要になってきます。

着地における骨盤と上体の傾きの原因

仙骨の疲労骨折のリスク

上半身につながる腰椎と仙骨が、骨盤すなわちが腸骨が逆方向に傾くため、応力が着地衝撃のたびに繰り返し仙骨にかかりことになります。その結果、衝撃の強い着地衝撃が繰り返されると仙骨に疲労骨折を起こすリスクがあります。

これを抑えるには、着地した際に遊脚が下に下がらない(腰、骨盤が傾かない)ように、外転(骨盤が回転)に関係する中臀筋などを鍛える必要があります。ですので、速く走れるようになるには怪我の防止のためにも筋力強化をしていきましょう。

骨盤
(関連する情報から自己責任で推定)

以上のように、3次元での解析をすることで身体の傾きや骨盤の傾斜などを定量的に把握することが可能になります。

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